マトリクス組織とは、「営業部門」「生産部門」「開発部門」「人事部門」「経理部門」を横軸に、地域、製品、顧客層ごとに区切られた事業部を縦軸にした組織形態です。
この記事ではマトリクス組織とはどんな組織形態か組織図を元に解説し、マトリクス組織の種類、メリット・デメリット、プロジェクト組織との違いを説明します。
- マトリクス組織とはどんな組織形態か知りたい
- マトリクス組織のメリット・デメリットを知りたい
- マトリクス組織はどんな企業に向いているのか知りたい
しろくま先生
マトリクス組織とは
マトリクス組織とは、「営業部門」「生産部門」「開発部門」「人事部門」「経理部門」を横軸に、地域、製品、顧客層ごとに区切られた事業部を縦軸にした組織形態です。
たとえばA製品の営業を担当する人は、A製品事業部と営業部門に所属することになります。A製品事業部長と営業部長がいるように複数の上司を持ちます。
マトリクス組織の始まり
マトリクス組織は、NASA(米国航空宇宙局)のアポロ計画を遂行する際に採り入れられらのが始まりです。アポロ計画は複数のプロジェクトで動いており、それぞれのプロジェクトごとにプロジェクトマネージャーを配置し、職能別の部門を縦軸に、プロジェクトを横軸にしたチームを編成していました。
日本では、2016年にトヨタ自動車がマトリクス組織を取り入れたことが話題となりました。トヨタ自動車では、先進国向けの第1トヨタ、新興国向けの第2トヨタという世界地域別のビジネスユニットを縦軸とし、技術開発本部、生産管理本部、経理本部などの職能別部門を横軸として横断させる組織体制を取りました。
この変更よって規模が大きく、グローバルな事業展開をしていながらもよりローカル市場の動向に柔軟に対応できるようになったり、重複機能を減らしより経営資源を有効活用できるようになりました。
しろくま先生
マトリクス組織の種類
マトリクス組織には、「ウィーク型」、「ストロング型」、「バランス型」があり、それぞれプロジェクトマネージャーの配置の仕方が異なります。
マトリクス組織の種類①ウィーク型
ウィーク型のマトリクス組織では、プロジェクトマネージャーを設けないので責任者がいないフラットな組織になります。
スタッフはそれぞれ自由に行動できるため、柔軟かつ迅速な対応が可能になる一方、メンバーの行動を把握しにくい、作業を効率よく進めることができないといったデメリットもあります。
マトリクス組織の種類②ストロング型
ストロング型のマトリクス組織では、プロジェクトマネージャー専門の部門に所属するプロジェクトマネージャーを各チームに設置します。
このプロジェクトマネージャーは、通常業務は行わずマネジメントを専門的に行い、事業部長・部門長よりも強い権限と責任をもつため指示系統が明確になり、メンバーは業務に集中することができます。しかし、その反面プロジェクトマネージャーが現場の状況を素早く把握してスピーディーに対応することができないというデメリットもあります。
マネージメント専門の部署を設けることによって、マネジメントに特化した人材育成が進みますが、人員に余裕がある企業でないと実現が困難になるでしょう。
マトリクス組織の種類③バランス型
バランス型のマトリクス組織では、プロジェクトチームの中からプロジェクトマネージャーを選びます。このプロジェクトマネージャーは通常業務を行うため、素早く状況を把握して調整できる一方業務負荷がかかってしまいます。
また、プロジェクトマネージャー以外にも事業部長・部門長が存在するため、指示に一貫性がなく混乱や対立を招くこともあります。
マトリクス組織のメリット
- 機能や業務内容の重複がなく、効率がいい
- 知識やノウハウが蓄積され、専門性を高めやすい
- アイデアの創出や連携がとりやすい
- 意思決定や緊急時の対応をスムーズに行える
- 企業経営者の育成がしやすい
- 課題や責任の所在がわかりやすい
- 予算や経営戦略が立てやすい
マトリクス組織では、事業ごとに「企画」「営業」「開発」の機能を設ける必要がないため、業務の重複がなく効率的で、部門・事業部それぞれに知識やノウハウが共有され、専門性を高めやすい、全社的な連携が取りやすいといったメリットがあります。
また、チーム単位で動くので、意思決定や緊急時の対応をスムーズに行える上に責任と裁量を持ったポジションが生まれ、経営人材の育成が進みやすくなります。
さらにチーム単位の業績を評価することができるので、課題や責任の所在がわかりやすく、予算や経営戦略が立てやすいのも特徴的です。
マトリクス組織のデメリット
- 複数の指示への混乱や対立が起きる可能性がある
- 人材管理・評価が難しい
マトリクス組織では、複数の上司が存在することから指示への混乱や対立が起きたり、組織形態が複雑であることから人材管理や評価が難しいといったデメリットもあります。
マトリクス組織とプロジェクト組織の違い
マトリクス組織とプロジェクト組織の大きな違いは、チームが解散するか解散しないかということです。プロジェクト組織はプロジェクト単位で編成されるため、プロジェクトが終わると解散してしまいます。一方。マトリクス組織はプロジェクトではなく職能別の部門を横軸としているため、人事異動はありますが解散することはありません。
この違いによってそれぞれメリット・デメリットがあります。
プロジェクト組織では、プロジェクトごとに適任なメンバーを集めることができ、同じ目的を持ったチームが編成されるので、チームに一体感が出て能率を向上させることが可能になります。しかし、その反面プロジェクトチームで培われた知識やノウハウが蓄積されないといったデメリットや評価や待遇が複雑になり、部下を育成する文化ができにくいっといったデメリットがあります。
一方、マトリクス組織は知識やノウハウが蓄積され専門性を高めやすい、部下の育成が自身の評価や待遇に反映されやすく育成環境ができるといったメリットがあります。
マトリクス組織に向いている企業
マトリクス組織は、状況に合わせて柔軟に対応できたり、機能の重複がなく経営資源を有効活用することができるというメリットがあり、規模が大きい企業、製品や展開地域が多い企業に向いています。
マトリクス組織を採り入れる企業は、創業期から機能型組織基盤を熟成させ、複数事業の展開に際し、チャンスを最大限に活かすためにマトリクス組織を取り入れる傾向があるようです。扱う製品レベルでも多様性をもつ企業は進める価値はあると考えられるでしょう。
まとめ
【マトリクス組織とは】
「営業部門」「生産部門」「開発部門」「人事部門」「経理部門」を横軸に、地域、製品、顧客層ごとに区切られた事業部を縦軸にした組織形態
【種類】
ウィーク型:プロジェクトマネージャーを設けない
ストロング型:プロジェクトマネージャー専門の部署を設け、マネジメント業務 に特化したマネージャーを設置
バランス型:プロジェクトチームの中からマネージャーを選出し、通常業務とマネジメント業務を兼任
【メリット】
- 機能の重複がなく効率的
- 知識やノウハウが蓄積され専門性が高い
- 全社的な連携が取りやすい
- 意思決定の早さ・柔軟性
- 予算や戦略が立てやすい
- 経営人材の育成が進む
【デメリット】
- 複数の指示への混乱や対立が起きる可能性がある
- 人材管理・評価が難しい
【プロジェクト制との違い】
- プロジェクトが終わっても解散しないため、知識やノウハウが蓄積され専門性を高めやすい
- 部下の育成が自身の評価や待遇に反映されやすく育成環境ができる
【事業部制組織に向いている企業】
- 製品や展開地域、顧客層が多岐にわたる
- 会社の規模が大きくなり社長一人では統括しきれない
- 変化が激しく素早くニーズを取り込む必要がある
- 機能の重複を避け、効率的に経営したい