モノグサ流の3STEPビジョンの設定方法〜自分たちらしさを保ちながら目標に向かうには〜

学校・塾・語学教室などの教育機関を中心に、学習支援SaaS「Monoxer」を提供するモノグサ株式会社。導入教室数が2700教室突破(2020年12月現在)とEdTechサービスとして国内トップクラスの実績を誇る注目のスタートアップ企業です。2021年に創業5年目を迎え、社員も増えて拡大フェーズにあるため、現在人事制度を整え採用を強化しています。その中でミッション・ビジョン、その実現のためのバリュー・人事制度・採用においてどのようなポイントにこだわっているのでしょうか。2020年に総額4.4億円の資金調達を実施し、取締役CFOとして経営の一角を担う細川慧介氏にお話を伺いました。

細川 慧介
モノグサ株式会社/取締役CFO
一橋大学社会学部卒。2010年株式会社リクルートに入社し、リクルートグループの経理を担当。2012年からは、株式会社リクルートホールディングスのIPOプロジェクトに従事。2014年からは、株式会社リクルートホールディングスの投資マネジメント室にてM&A、グループ再編等の社内FA及びRecruit Strategic Partners取締役として、リクルートグループのCVCファンドの企画・運営に従事。その後同期である竹内の誘いで、モノグサ株式会社に入社。

モノグサはどんな会社?

―― まずは会社について色々聞きたいのですが、創業から今に至るまでを聞かせてもらえますか?

もともとは創業者の竹内が2012年頃に思いついた英単語シェアアプリのアイデアから始まっています。当時から竹内は30歳で起業して事業を通じて教育格差をなくしていくということをビジョンとして持っていました。30歳になったときに何のビジネスをやっていくかと考えた際に、彼自身が英語を勉強していたこともあり、英単語シェアアプリのアイデアが浮かんだようです。

当時、市販の英単語を覚える教材はTOEIC用やTOEFL用に限定されていました。例えば、インドネシアで英語を使ってビジネスをできるようになるための英単語など、個々人の具体的なニーズに合うものはあまり売られていませんでした。竹内は、このようなニーズを持っている人は世の中に必ずいると考え、単語帳を簡単にシェアできたり、アプリケーション上で学習できたりするものを事業のアイデアとして検討していました。

竹内は営業出身でエンジニアではないので、当時大学院生で、現在はモノグサの共同代表をしている畔柳(注:竹内氏の高校同級生)にコーディングの方法や事業アイデアを相談し始めました。3年くらいディスカッションしていく中で、「そもそも英単語アプリが既に世の中にたくさんある中で、スタンダードなものがないのは、英単語を覚えるために、根本的な解決ができているプロダクト・サービスがないからなのではないか」という話になりました。そして2016年の創業のタイミングでは英単語シェアアプリではなく、記憶にまつわる課題をテクノロジー・ソフトウェアの力で解決する事業を始めることになりました。

ビジョンは短期・中期・長期の3STEPで設定

―― ミッション・ビジョン・バリューはどのタイミングで策定されたんですか?

「記憶を日常に。」というミッションは私がジョインする前、創業時から決まっていました。

なので、私がジョインするときから「記憶を日常に。」というミッションがあり、創業者二人から「グローバルに事業を展開したい」、「記憶のプラットフォームを作りたい」という想いを受け取り、そこにどうしたら辿り着けるかということをまず考えました。その中で、最初はto Bのビジネス、領域としては教育領域から進めることにしました。

―― なるほど、ビジョンを短期・中期・長期で設定している会社で、且つそれを明文化して発信しているのってこだわりだなと感じていたんですが、そこから来るものなんですかね

そうですね。長期ビジョンである「記憶を日常にする」「記憶のプラットフォームを作る」を実現するために、そしてそこに至るためのプロセスを明確にしたいと考えました。この2つはぶらしたくないと考えているのですが、短期・中期ビジョンは区切り方、将来の状況によって変化し得るかなと思っています。

ビジョンが実現したときにどうなっているかとか、そこに至るプロセスがどうなのかを明確にすることは経営する上でも重要ですし、人を採用するとき、資金調達をする時にも大切です。

―― たしかにそうあるべきかもしれませんね。長期的な目標に対してロードマップを引いた形ですね

そうですね。これは私のスタンスとか性格にもよる部分もあると思います。たとえばテスラモーターズが掲げているような「持続可能な社会をつくる」という壮大なビジョンを掲げることも良いと思いますが、「足元どういうふうにやって、将来的にはこういう姿を目指す」というプロセス定めることも必要だと考えています。一方で、あくまで執着しているのは長期のビジョン。そこに至るまでの道程は、常に変わりうるものだと思って柔軟にとらえています。

モノグサらしいバリュー策定

―― バリューについてはいつ、どんなステップで作ったんですか?

社員が10名を超えてきたタイミングだったので、去年(2020年)の6月の合宿で決めました。トップダウンで決めるのはモノグサらしくないので、社員全員から意見をもらいました。どういう想いでこれまで働いてきたか、様々な話をした中でいくつかキーワードが出てきたので、それを元に経営陣の三人で議論して、バリューを現在の形に決めました。

―― なるほど、なるほど。ビジョンを元にディスカッションして、そこからキーワード出しをまずはみんなでやって、それを取締役の3人でまとめたってイメージですかね

そうですね。

―― バリューを決めるときにワーディングとかで工夫したこと、こだわったことってありますか?

設定して間もないこともあり、ここから更に試行錯誤してより良くしていく過程ではありますが、バリューを設定した時に意識していたのは言葉の正確性ですね。経営陣においてその部分にこだわりがあるので、キャッチーなワーディングではなく、プレーンで、落ち着いた表現にしています。こういったプレーンな表現というのが会社のカラーを表現していると思っています。これを浸透させていくための工夫は今取り組んでいるところですね。

―― 端的に言うとものぐさらしさってどういうことなんですか?採用ピッチにも記載あるボードゲームをやるっていうのも含めて個性的に見えますが

最初に「人類への奉仕」、「事業へのオーナーシップ」、「プロフェッショナリズムの体現」という3つを定めたのですが、ストイックすぎる印象があり、会社のカルチャーを表現しきれていない感覚がありました。この3つだけならボードゲームしないほうが良いぐらいの話だと思うんですよね。モノグサ社の個性としては壮大な目標に向けて日々取り組みつつも、常に余白や余裕も持っているよね、ということで4つめの「ものぐさで行こう」を足しました。

―― なるほど、確かに最後に「ものぐさで行こう」を一個加えるだけで印象変わりますね!

モノグサらしい人事制度作り

―― 次に人事制度について話を聞かせてもらえれば思ってるんですけど、現在の人事制度がいつ出来て、どう評価してて、それがどう昇給に繋がるか。その辺りのポリシーだとか、こういった運用してますとかがお聞きできればと思います

人事制度を検討し始めたのが、バリューと同じぐらいの去年(2020年)の2月ぐらいからで、動き出したのが4、5月ぐらいです。一年弱くらいかけて作って運用して一回転したのが(2021年)1月。ただ、制度の内容はこれからも更新し続けていくと思います。

人事制度には等級制度・評価制度・給与制度があります。等級は職種別・等級別の職務要件に則って設定されています。また、評価は「パフォーマンス評価」と「価値観行動評価」に分かれており、パフォーマンス評価は個人ごとのOKRの進捗等に基づいて行われています。一方で「価値観行動評価」は、日々の行動がバリューを体現しているのか、周囲にプラスな影響を与えているか、といったところを評価しており、これにはバリューを浸透させていく目的もあります。

パフォーマンス評価と価値観行動評価をセットで半年に一度実施し、その際に等級の更新も行なっています。この評価や等級の見直しの結果がそのまま給与に反映される仕組みです。

等級制度は比較的オーソドックスなものだと思うのですが、評価制度は少し特徴的かもしれません。評価と給与が連動していて、ブラックボックスをなくしています。

背景としては、制度を作る際に社員数が10名ちょっとだったのですけど、大企業出身の中途社員が多く、共通して過去の所属企業での人事制度が透明性・納得感がなく、不信感も生まれていたということで、働いてもらう人にとって同じようになるのは良くないなと思いました。人事制度の透明性というか、納得感は重視していています。

―― なるほど、賞与は設けてたりしますか

賞与制度は設けていないですね。年俸制でやってます。

私とCEOの竹内は新卒でがリクルートに入社しましたが、特に営業はインセンティブやボーナスの仕組みが充実していました。それによって営業のモチベーションを上げられていた側面はあると思います。

竹内はリクルート時代トップ営業マンで、現在も営業という仕事に誇りを持っていますが、短期的な営業成果は水物である、という冷静な見方も持っています。

そのため、モノグサでは成果だけでなく、成果を出すためのプロセスなど総合的に評価をして、中長期の目線でプラスになるように設計しています。

― 人事制度をつくる上で重要視するポイントっていくつかあると思うのですが、どの辺に力点をかけておいて、1年ぐらいかけて人事制度を作りましたか

試したり調整したりしながら進めてきたので、実質半年強で作成しました。リクルート時代にも人事を経験していた杉山や外部の方とも連携しながら綿密に作っていきましたね。

質問と少しずれるかもしれないですが、資本政策や人事制度って不可逆なことが多い。事業内容やビジネスモデルは変えることもできますが、人事制度は働いている人の生活に直接影響しますし、法律の制約もあるので、そう簡単に変えられない。そのため、何百人単位に会社が大きくなっても耐えられる強固な人事制度にしたいと思っています。

―― 規模が大きくなったときに人事制度に不可逆性があるということでいうと、ポイントとして抑えて置かないといけないところってどこになるんでしょうか

透明性だとか、ロジカルか、というところだと思うんですよね。

インセンティブを設定するとかではなく、透明でロジカルな人事制度が必要なのは、僕らがやってる事業やマーケット、働いている人の特徴が要因としてあると思うんですよね。短期間で急成長させなきゃいけない事業だと、「インセンティブこれぐらい出すよ、明日から部長ね。」みたいなやり方も一つの形としてありだと思うんですけど、ぼくらが対峙している市場はそうではないです。まだ顕在化していない課題をクライアントとユーザーと対話をしながら見つけていき、一個一個課題を解決していく。

そういう長期で取り組むべき市場、課題なので、いつ誰が見ても理解可能で納得できるものにすべきだと考えています。

―― 人事制度を設計してそこからみんなに伝えて運用してくっていうところで、工夫している部分や気をつけている部分ってありますか

そうですね。人事制度を作って 運用しはじめて一回転したというのがこの1月です。まだまだこれからという前提はあるのですが、人事制度を作る前から採用にはこだわっています。

採用プロセスも特徴的かもしれません。選考の中でかなりの人数と会ってもらっています。

職種によって採用プロセスは違うんですが、一次面接は役員または人事、二次面接は各職種のマネージャーが面接をします。最終面接は役員2人と他職種のメンバーも含めて実施しています。例えば、ビジネス職であれば、エンジニアやデザイナーから質問を受けたり、エンジニアであればビジネスサイドのメンバーと面接をさせていただくという形です。

モノグサは30名弱の会社ですが、採用プロセスの中で半分近くの社員と会ってもらっています。そして、選考に参加した全員がフラットに議論する場を最終面接後に設けてそこで採用可否の判断をしています。

―― エスカレーションして最後の面接で社長がOKなら決まりという形ではないってことですね。みんなでディスカッションするときに議論が紛糾したり、ポジショントークも生まれそうですが

はい。時間で言うと1時間半以上議論するときもありますね。

求職者への印象が違えば何故違うと思うのかをディスカッションはするのですが、カルチャーかもしれないですけど、ポジショントークはなくて建設的な議論ができている印象です。

―― 近年、フラットな組織が少しずつ増えてる印象はありますが、近いイメージでしょうか

そういうカルチャーが根付いているかもしれないですね。プロダクトを作っていくときも四半期に一回社員全員参加で議論する時があって、こういう理由でこうした方が良いんじゃないかと意見を言うことはウェルカムな会社なんです。

―― フラットに議論が出来る人か、そしてそれを受け入れることが出来る人かを、しっかりと見極めて採用できているってことですかね。でも、それって意思決定の難しさって言うのも同時発生しそうな気がするんですけど、いろんな意見があるなかで、一つの方向に意見を集約させるのにどのような形をとっていますか。

「記憶を日常に。」という言葉にいろいろ解釈はあるけど、全人類にモノグサを届けるんだということやそのプロセスとしてユーザーに課題解決だったり、心地よい体験をしていただくというビジョンの実現をを常にみんな意識して議論しているというようには思います。最後は経営陣が決めざるをえない場面においては「清々しい意思決定をすること」を意識するようにしています。

役員会議においても役員同士で利害関係を意識して忖度だとか、誰かに配慮して意思決定をしないようにしています。

――  そうあるべきですよね。今のフェーズでそういった(意思決定についての)文化をつくっていければいいですよね

はい。そこは大切にしていきたいと思っています。

――  細川さん自身が採用時、人を見るときに大切にしてることって何かあったりしますか?

その人のフルのポテンシャルを知りたいと考えています。プロセス、場として、緊張しているだけであれば、緊張をほぐしてあげて、今までやってきたことやそこにある想いをしっかりと引き出そうという部分は心がけていますね。

会社がうまく行かなくってしまうリスクは常にあるので、どういう状況、環境におかれても、他責にせず、1人のプロフェッショナルとして仕事が出来る人なのかというのは見るようにしています。

ー CFOとして、経営者として、責任を背負っているからこそ目指すべき場所にたどり着くためにどういう人間を採用するべきかはしっかりと見定めなければ行けないということですね

そうですね。加えて、モノグサ社はポテンシャルも含めて素晴らしい人を採用し続けられていると思うので、その人達がモノグサ社で働いてよかったと思ってもらうという責任も持っていると思っています。

ー 長期的な目線で採用が、会社にとって、そしてその候補者にとって、どうなのかを考えながら面接に臨まれるという感じですかね

はい。短期的には成果とか業績とか出せるけれど、中長期的には僕らの会社じゃないほうがある意味いいかもしれないという方もいらっしゃたりします。お互いのためにそこをしっかり見定めるという感じですかね。

ー 最後にどういう人と働きたいですか?今募集中の職種は?

全職種募集中です。(笑

ビジネスサイド、エンジニア、コーポレート、全てですね。

一緒に働きたい人は、前提として素直さ、謙虚さはありつつ、バリューで「Amazing Peopleと働く」というものを設けているので、年齢に関わらずその人の考え方ややってきたことがすごいなって思える人ですね。驚きをもった尊敬というか。「こんなに若いのこんなことしてるのか」、「ベテランなのにまだまだ成長意欲があってすごいな」とか、そんな人と一緒に働きたいですね。

ー 最後、駆け足になってしまいましたが、人事制度や採用についてのアプローチを色々と聞けて勉強になりましたし、楽しかったです。他の会社がどうやって考えているんだろうと思っている経営者・人事責任者・担当者って多いと思うので、一つの事例として参考になるなと感じました。ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

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採用情報 | Monoxer

取締役CFO細川氏と人事杉山氏(写真向かって左)