転職業界20年のプロ、オブリージュ代表の大川章さんに、はじめて転職する人に向けて「転職活動のやり方」を解説していただくコラム。第14回は「ジョブキャリア」についてです。理想の生き方を実現するために必要なことなど、人生や仕事のヒントになるお話をしていただきました。
大川章
ベンチャー企業、外資系企業を中心としたサーチエージェントであるオブリージュ株式会社の代表。テクノブレーン株式会社、ジェイエイシージャパン(現ジェイエイシーリクルートメント)、オムロン系の人材会社等を経て現職。 千葉県在住。
ー今までは転職活動のポイントなどについてお話しいただきましたが、今回は最終回ということで、ライフキャリア(生き方)とジョブキャリア(働き方)についてお話しいただきたいと思います。
よろしくお願いします。
ライフキャリアとは端的に言うと、「人生の軌跡」です。生まれた時から今まで、そして自分の人生を全うするまでの「人生の物語を作る」ということなんです。
このライフキャリア設計が軸となってはじめてジョブキャリアがある、ということを意識しておくべきだと思います。
20代や30代の方が50代・60代・70代になった時に何やってるのかな?って想像がつく人ってそんなにいないですよね。
でも、なんとなくこうなっていたいという理想像は持ってた方がいいなと思うんですよね。
生き方(ライフキャリア)や働き方(ジョブキャリア)を考えなければいけない背景として、「人生100年時代」と言われる時代になってきていることがあります。
単に長生きするという意味だけではなく、生き方や働き方を大きく変えなければならない時代になったということです。
ーライフキャリアのイメージがつきにくいのですが、例えばどういった例がありますか?
例えば、地元に貢献したいとか、旅しながら写真を撮りたいとか、好きな人とゆっくり過ごせなかったからもうおじいちゃんおばあちゃんになったら一緒に旅行をずっとしていきたいとか。
仕事で何かに貢献したいとか余暇を楽しみたいとか色々あると思うんですよね。
そういった理想の生き方を実現するためにどんな仕事をしてくと繋がるかを考えていただければいいと思います。
例えば、仕事を65歳で退職して、地元に何らかの貢献をしたいと考えた場合、
地元に貢献するにはどうしたらいいか、どんな役割が担えるか、何が必要か、をリストアップし、必要なスキルは?資格は?費用は?人脈は?と具体的に調べていきましょう。
キャリアゴールに向けて進んでいく道のりのことをキャリアパスと言いますが、ゴールさえイメージできればキャリアパスも自ずと見えてくると思います。
ー成し遂げたいことを実現するための手段として仕事でスキルを身につけたり人脈を作っていくということですね。
そういうことです。ジョブキャリアはライフキャリアの通過点でもあるので、大きな視野で今の仕事を考えるときっと新たな気づきがあると思います。
20代や30代でまだライフキャリアがないっていう人は、人生全体として俯瞰的に見て、それからジョブキャリアのことを考えていくといいと思います。
お金を稼いでいるから余暇が充実するっていうのも当然あるし、仕事を活かしてやりたいことを実現できるかもしれないですし、仕事も人生も全部繋がってるよね。
理想の生き方を実現するために大切なことを学べる例として、アンパンマンを描いたやなせたかし先生のお話をしたいと思います。
理想の生き方を実現するために必要な2つのこと
やなせたかしさんは、戦後に三越に入社してグラフィックデザイナーとして活躍されていて、今風に言うと副業で漫画家をやっていて34歳で三越を辞めて独立された方なんです。
独立した後も漫画をやりつつ、結局色んなイラストの仕事だったり、舞台制作や放送作家、作詞などの仕事をやりながらアンパンマンを漫画で作り、それが世に出たのが54歳だったんです。
だから、独立して20年後ですよ。結局アンパンマンがテレビ放送されてメジャーになったのが62歳の時ですから、結構遅咲きだと思うんですよ。
要するにやり続けてなんぼっていうのがここでよく分かりますよね。
アンパンマンって誰もが知っているロングセラーの作品なんですけど、それがヒットしたのも結局ずっとずっと書き続けてきたからであって、且つ、他の仕事もしながらやっていたっていうことですよね。
要するに、継続することの大切さと、好きな物以外の武器を持っていたからこそ成功に繋がったっていうところのこの二つはやっぱり大事なことだよねっていうことなんですよね。
要はこの二つがうまく回っていたからこそアンパンマンが生まれメジャーになったっていうことだと思うので、これは生きるヒントになるなとはすごく思うんですよね。
継続することは多分趣味であったり好きなことであったりそういうことだと思うんだけど、好きな物以外の武器というのはキャリア的なところですよね。
ーこれはデザイナーとか作家さんの話なんですけど、普通の会社で働く人はどうですか?
今は副業に対して寛容になってきている時代なので、いわゆる一般的なビジネスマンであっても副業で何か稼ぎたい時に好きなものを活かすのかもしくは今やってることをそのまま副業で使うのかっていうこともできるかもしれないし、
例えばキャリアコンサルタントをやってる人でも副業で相談するようなことができたりすると思うんですよね。
趣味でもいいし、もちろん今の仕事を副業に活かしてもいいのかもしれないですけど。
趣味なのか仕事なのかは別として何かを継続してやってみることと好きな物以外の武器を持つことっていうのは大事なんだなと思うし、この二つは結構ビジネスビジネスマンでもなんか結構応用が効くんじゃないかなと思います。
そういったように、理想の生き方を実現するために必要な手段として仕事の武器を身に付けていくと考えていただければいいと思います。
やなせさんも、これを世に出したいっていう気持ちが一番強かったのかもしれないですけど、これで食って行こうと思って思っていたよりはこれを世に出したいからが為に作家とかもやりながら続けていたのかなと思います。
ですので、まさにライフキャリアというものとジョブキャリアっていうものが繋がっているいい事例なんだなっていう風にはすごく思うんですよね。
ライフキャリア・ジョブキャリアを考える人へのアドバイス
やなせたかしさんの例は、会社にいてこの仕事を続けても自分のやりたいことには繋がらないなと思っている方や転職を考えている方にとって考える機会になれば嬉しいです。
今やってる仕事が本当にキャリアアップに繋がるのかな?とか何となくこう疑問に思う時って結構あると思うんですけど、
でも結局その仕事でお客様が喜んでくれているかもしれないとか、誰かが評価してくれる可能性がある訳ですよね。
仕事って結局誰かに評価されないと成功には繋がらないと思うんです。
やなせさんも場合もアンパンマンを見つけてくれた人、共感してくれた人がたくさんいて世に出たわけなんです。
僕の好きなやなせさんの格言があるんですけど、
「成功の秘訣というのは、
ぼくに言わせれば、70%が運。20%が努力で、10%が天分。
ぼくがどれだけ漫画を書いていたとしても、
そのよさを発見する人、本にしたいと思う人が出てこなければ駄目なんです」
運が良くないと絶対成功には繋がらないですよね。やなせさんの場合、70パーセントがファンの方と引き合わせてくれたんですよ。
そして、20パーセントの努力や継続する力とか、10パーセントはグラフィックデザイナーや作家としての才能とかですね。そしてそれが全部繋がって成功に繋がったということなんでしょうね。
結局、継続することも運もそうだし努力もそうだし、全部が組み合わさって自分のキャリアに繋がっていてそれを認めてくれる人がいて、そこから新しい仕事に繋がって、さらにキャリアアップにつながり、年収に繋がりって全部繋がっていくってことなんだよね。
ー振り返ってみたら、キャリアアップしてるなとか評価してもらえるなと実感できて、仕事に対する姿勢が変わってくるかもしれないないですよね。
そうなんです。そこでもし、今の仕事ではそう感じられないなと思ったら転職することになるかもしれないですけど。
今までのコラムでは転職活動のテクニックをお話ししてきたと思うんですけど、結局それは充実した人生を送るためなんだってことを伝えたいんです。
そう思えばもう少しキャリアのことを気楽に考えられるかもしれないし、客観的に自分みることで新しい自分を発見することができるかも知れないですし、時代時代で色んなことが起こるからそれをうまく回避しつつ、充実した人生を送っていただきたいと思っています。
ー人生のヒントになるお話が聞けてよかったです。ありがとうございました。