大学院時代に就職活動に失敗し、派遣社員になったゆうさん。正社員への転職に苦労するものの、バイオ系の上場企業の契約社員として入社後、正社員登用試験に合格し正社員への転職に成功。さらに汎用スキルをつけるべく30代で転職を試み、一時はうまくいかなかったが技術職から営業職への転職に成功。就職活動ではうまくいかなかったものの、転職活動での困難を乗り越えて転職できたワケについてお話を伺いました。
就活に失敗。派遣社員になった背景
ーまず、これまでの経歴を教えていただけますか?
大学院を卒業して、2年間大手製薬会社で派遣社員をした後に山形の研究系の上場企業の技術職に契約社員として転職し、入社後に正社員登用試験に合格して正社員になりました。
そこから今年の1月に東京の研究者向けに試薬の販売をしている会社に転職して営業の仕事をしています。
ー”派遣社員からの転職”と”キャリアチェンジ”とキャリアの大きな変化を2回経験されているんですね。大学院で学んでいたことと契約社員で入社した会社では同じ分野なんですか?
同じ分野ですね。大学では、酵母の環境を変えてどう変わるかとかを研究していて、いわゆる遺伝子組換え操作をやっていました。
派遣で入社した会社では、大学で身につけた遺伝子組み換えの技術を活かして社内で研究している方々に提供する実験材料を作っていました。
ーどういう経緯で派遣社員で製薬会社に入社したんですか?
大学院の時に就活がうまくいかなくて、内定をもらえなかったんですよね。
製薬会社とか化学系をメインに受けていましたけど、具体的な進路を決めずに就職活動をしていたので、マスコミとかメディアとか、建築系とかいろいろ受けていました。
その後に1年ほどニート期間がありまして、その時もいろいろな企業を受けていたけど内定はもらえませんでした。その時が自分を見つめ直す良い機会で、見つめなおした結果、研究分野をまずはやりたいなって思いました。
経験を積むという意味で、まずは派遣から始めようと思いました。1年ふらふらしていて親に叱られたおかげもありますが。
派遣だったら技術者の仕事は結構あって、すぐに仕事が決まるんです。
ーまずは派遣社員として経験を積んで、それを活かして正社員で転職しようと考えていたんですか?
そうですね。派遣から駆け上がっていこうと考えていて、ゆくゆくは転職とか正社員で働くことを考えていました。
派遣の契約期間は3年だったんですけど、2年目の時に派遣先の会社の内部改変が起こったのでそのタイミングで転職を決意しました。
派遣社員から正社員への転職に苦労
ー派遣社員から正社員への転職は難しかったですか?
派遣社員だと正社員の人がやるような主導的な経験がなかったので、結構難しかったですね。
あとは、派遣の契約期間が迫ってきていたこともあるし、貯金も何ヶ月も転職活動をできるほどではなかったので、時間的なプレッシャーもありました。
ー仕事をしながら転職活動をするのって結構大変ですよね。
当時は面接が対面だったので、移動にも時間がかかるし大変でしたね。
ー転職活動にはどれぐらいかかったんですか?
大体4ヶ月ぐらいかかりました。転職が決まったのは契約期間が終わってからになってしまいました。
前半の2ヶ月は働きながらだったので、そこまで時間をかけられなかったんですけど、後半の2ヶ月は転職活動に集中していました。
ーどれぐらい求人に応募しましたか?
書類応募だけで50〜60社、面接だと10〜15社ぐらいだったと思います。
ー結構多いですね。
正社員経験がないと結構厳しかったですね。
ー転職先はどんなところを探していたんですか?
その時は業界的に製薬とかバイオ系のベンチャーだったり、化粧品の会社をみていて、事業開発とか、薬の治験をやっているところとかを受けていました。
基本的には東京で探していたんですけど、研究職や技術職の場合は工場とか研究所とか受けてました。工場や研究所は土地がないといけなくて、地方にあることが多いので、地方も受けたりしていました。
ー派遣での経験が活かせるところを探していたんですね。
そうですね。
派遣社員から正社員への転職に成功したワケ
ー採用が決まった会社はどんな会社でしたか?
山形にある上場企業で、実験サンプルや食品などの成分を測って分析結果をお客様に提供するのが仕事です。
分析の流れが決まっているので、工場のラインのように決められたことをやっていく仕事でしたが、それだけでなく業務改善や新事業開発なども手を挙げれば主導してやらせてもらえる社風の会社でした。
ーどういうところを評価して採用してもらえたんですか?
採用の理由は聞いてないんですけど、大手企業で派遣社員としての経験があったことが雇ってくれた理由としては大きいのかなと思います。
ー同業の大手企業で働いていた経験が転職に役立ったんですね。
そうですね。
あとは単純に社員の方と会った時の雰囲気とかもあると思います。
ー社風が合っていたんですね。
そうですね。
それと、当時は生物系とか化学の知識を持っている人が会社にあんまりいなかったっていうのも理由の1つだと思います。
ーちょうど求められている知識とか経験がマッチする会社だったんですね。
そんな感じですね。
田舎だと東京ほど人がいないので、ベンチャーで駆け上がりの時期とかだと特に知識を持った人をなかなか採用できないので、学生時代の研究や派遣での経験を持っているっていうのは希少だったのかもしれないです。
且つ、僕は山形に行くことに抵抗がなかったので。
ー地方に行くっていうのも良かったのかもしれませんね。
結果として良かったのかもしれませんね。本当に自分に合う会社だったというのもありますけど。
汎用スキルを身につけるべく30代でキャリアチェンジ
ーその会社を転職しようと思ったのは何かきっかけがあったんですか?
技術職って結構ニッチなんです。
工場のライン作業みたいな感じで、その仕事でしか使えないスキルがメインで、汎用性の高いスキルが身につかないんですね。
だから、30歳前後ぐらいで将来のことを考えた時に、いろんなことに対応できるスキルを身につけたいと思って転職を決意しました。
ーどんな業界・職種で探していたんですか?
業種は絞っていなくて、職種で選んでいました。
事業戦略とかマーケティングとか、それに近い営業とかを見ていました。
ー研究が活かせる仕事がやりたいとかではなかったんですね。
バイオ系の研究についても自分の関心分野としての範囲でもいいかなと思っていたので、それについてはあまりこだわりは持ってなかったです。
というのも、研究って日進月歩が激しくて日々変わるので、そこに身を置くよりも汎用的なスキルを身につけたいなと思ったからです。
統計のスキルとか、周りを巻き込む力をアピールして、業種関係なく入ろうと思っていました。
前職の会社は手をあげれば主導してやらせてもらえる社風で、そこで自分が主導してやったことを話しました。
ー転職先選びではどういうところを重視していたんですか?
僕が裁量を持てる会社っていうのと、もう一つは、学べる環境っていうのが軸でした。
自分から学んでいくのはもちろんですけど、周りの人も成長意欲が高くて切磋琢磨できる環境の方がいいなと思っていました。
そういった環境は大変だと思うけどあえて選んでいました。
面接でも雰囲気ってわかるので、服装とか社員の方がどんな価値観を持っているかとかを見ていました。
100社以上受けて失敗?!
ーキャリアチェンジってどういうところが難しかったですか?
職種の経験がないから難しかったですね。
30代だと特に経験ある人とかが優先されるので、スキル面が足りてないっていう理由で書類選考で結構落とされました。
入社後に育成するっていう考え方もあるとは思うんですけど、30代だとやっぱり即戦力が欲しいなって思われていたと思います。
実は、今回の転職活動とは別の時に転職活動を2〜3ヶ月やっていたんですけど、その時に書類で100社以上落ちました。この時は技術職や研究職も受けていましたが。
ー未経験の職種だと書類の時点で結構落とされるんですね。
エージェントの方に必須条件を無視していいと言われて、たくさん応募したのもあるとは思うんですけどね。
そこで転職活動をそのまま続けるっていうのもあったと思うんですけど、会社の内部の改変があって、現職に残った方がいいなって思ったのもあるし、今のままではダメだなと思って力をつけようと思ったので、仕事に専念しようって切り替えていました。
ただ、この時に転職活動をしたことで、必須条件はちゃんと見て応募した方がいいってことだとか、職務経歴書の書き方とか、こういう職種は向いていないとかがわかったので良かったと思います。
いずれ転職はするんだろうけど今のままではだめだなって思ったので、それまで以上に仕事も頑張りましたし、オンラインで仕事に関係なく多くの人と話したり、コーチングの資格を取得したりしました。
ーそこで仕事へのモチベーションも上がったんですね。
モチベーションが上がったというより、市場価値をつけないといけないっていうのもあったので上げました。
3年ぐらい勤めていて、自由にできるようになったというのもありますし、前職は手をあげれば自分が主導してやらせてくれる会社だったので、それまで以上に仕事に積極的に取り組みました。
ー転職活動を再開した時には、その時の経験をアピールしたんですか?
アピールしましたね。
自分がリーダーシップを発揮して仕事をした経験を話して、受け身な姿勢ではないってことをアピールしていました。
ー1度転職活動でうまくいかなかったけど、そこから仕事に前向きに取り組んだことが転職でも活かされたんですね。
そうですね。
あとは、自分から学んでいく姿勢は評価してもらえたんだなっていうのはあります。
今の直属の上司から言われたんですけど、僕の趣味が読書で、自分で学ぶことが苦ではないってことが採用の決め手の1つだったと言ってもらいました。
ー業界の移り変わりが激しいところだと、主体的に学ぶ姿勢は特に評価されやすそうですね。
そうだと思います。
ー転職活動を再開してからどれぐらいで転職が決まったんですか?
3ヶ月ぐらいですね。
たくさん受けることを覚悟していたんですけど、未経験だからほとんど書類選考で落ちてしまって、面接を受けたのは同業の2社でした。
ー業種を絞っていたわけではないけど、結果的にこれまでの経験を活かせるバイオ業界になったんですね。
そうですね。
ーなぜその会社に決めたんですか?
業界の中では大手なので、学べる環境があるっていうのが1番の理由です。
僕はベンチャー気質な人ではあるので、ベンチャーに入って試行錯誤しながら学ぶっていう手もあったんですけど、ある程度確立された中で学んでいくっていくのが軸としてありました。
ー入社してみてどうですか?
業界の事情とか技術はもちろんですけど、営業のノウハウとか流れとか、覚えることが多くて大変ですね。
でも、僕のいる部署はみんなが日々学びながら仕事をしているので、みんなで切磋琢磨できる環境で良かったなと思います。
ー就職活動ではうまくいかなかったけど、そこから契約社員として経験を積んでから転職して、今度はキャリアチェンジの困難を乗り越えて自分の理想の環境で働けているんですね。
そうですね。たくさん学んでいかないといけないことは多いので、これからですけどね。
ー貴重な経験を聞けて良かったです。ありがとうございました。